11/10/2020

《ウルビーノのヴィーナス》ティツィアーノ・ヴェチェッリオ 《Venere di Urbino》Tiziano Vecellio


ティツィアーノの作品のうち最も有名で、広く模倣された裸体画が、この《ウルビーノのヴィーナス》です。この作品は、後のウルビーノ公となるグイドバルド2世・デッラ・ローヴェレによって注文され、1538年までに完成しました。


1534年、グイドバルドは政治的理由からわずか10歳の少女ジュリア・ヴァラーノと結婚し、カメリーノ公の地位を獲得しました。おそらく何年後かにグイドバルドは、夫婦の契りというものを幼妻に論すために、エロティックなこの絵を花嫁に贈ったのでしょう。したがってこの絵は、婚姻にまつわるエロティックな側面を強調するに相応しく、しかも文化的にも非の打ちどころのない手本を彼女に供しています。


この作品は、ローマ神話の愛と美の女神ウェヌス(英語名でヴィーナス)を描いた作品で、ヴィーナスのポーズは、ティツィアーノが補筆し完成させたジョルジョーネの《眠れるヴィーナス》 (6枚目、ドレスデン、アルテ・マイスター絵画館所蔵)が基になっていますが、ティツィアーノはさらに官能性を追求した作品に仕上げています。


(3枚目)

ヴィーナスは気だるそうに横たわり、誘惑するような視線を観者の方に投げかけます。ほどけた髪、乱れたベッド、恥らうように下腹部を覆う手、ヴィーナスの聖花である赤いパラ(4枚目)など、すべてが彼女のエロティックな資質を暗示しているかのようです。


(5枚目)

彼女の足元に丸まっている子犬は、夫婦の忠節を表しています。実際この女性の誘惑はただ彼女の夫のみに向けられたものであり、この絵は夫の私室の壁に密かに掛けられ、彼のみが鑑賞を許されました。こうした状況を強調するために、背景の窓じきいに、画家はミルト(ギンバイカ)の鉢植えを描いています。これはヴィーナスゆかりの低木の常緑樹で、永遠の愛と結婚の忠誠を象徴します。


帳の右側には、ダマスク織りの壁掛けがかけられた邸宅の豪華な寝室の内部が垣問見られます。そこには侍女が2人おり、結婚に欠かせない婚礼用のカッソーネ(長持ち)を開けています。そのうちの1人は、彼女らの女主が公の場に出るのに相応しい盛装を選んでいます。


作品情報:

Venere di Urbino, Tiziano Vecellio, 1538, Olio su tela, 119×165 cm, Galleria degli Uffizi (Sala 83), Firenze

Venere dormiente, Giorgione e Tiziano Vecellio, 1507-1510 circa, Olio su tela, 108,5×175 cm, Gemäldegalerie Alte Meister, Dresda, Germania