11/07/2020

《パンチャーティキの聖家族》アーニョロ・ブロンズィーノ 《Sacra Famiglia Panciatichi》Agnolo Bronzino


アーニョロ・ブロンズィーノは、1540年頃、裕福な商人バルトロメオ・パンチャーティキとその妻ルクレティアのために、対幅肖像画を描きました。同時にまた、夫妻のため、この、聖ヨハネを伴う、聖母子と聖ヨセフ(聖家族)を描いた礼拝画を制作しました。洗礼者聖ヨハネの存在はおそらく注文主の要請に基づきます。パンチャーティキは、バルトロメオの名で知られるものの、実際の洗礼名はジョヴァンニだったからです。


この作品の聖家族は、おそらく、エジプトへの逃避からの帰還を描いています。実際、外典に由来する伝承は、聖家族が帰還の途上、マリアの従姉エリザベツのもとに立ち寄ったところ、エリサベツの息子ヨハネがイエスに対し敬虔な様子を見せ、まだ幼いながらも、イエスを神の子と認めてあがめたと伝えています。


(3枚目)

幼児聖ヨハネがイエスを抱擁し接吻しようとしています。地面に横たわり、豪華な青の繻子(サテン)の枕と旅の荷物に支えられた幼子イエスは、聖骸布を暗示する白い帯に体を巻かれた状態で眠っています。


その足下には、聖ヨハネの巻紙が置かれ、そこには、イエスを、人類救済のため自らを犠牲とする救世主と認めたときの、ヨハネの言葉が記されています。


イエスはむき出しの岩場にもたれており、その眠りは死の予型となっています。岩に支えられ交差する両足、つまりキリストが傑刑像として描かれる場合の典型的なポーズをとる幼子の体も、死を示唆しています。幾人かの学者によれば、支えの役を果たす岩もまた、ゴルゴダの丘の暗示であるといいます。この岩にはブロンズィーノの署名が添えられています。


最後の預言者である聖ヨハネは、救世主の悲しい運命を知る唯一の存在であり、それ故にイエスを慰めています。


(4枚目)

若い姿で描かれた聖ヨセフを従えた聖母は、幼子らの様子を恍惚とした眼差しで見つめています。その左手には、知恵の象徴である書物を持っています。赤い衣は、ねじれた腰帯で留められていますが、この帯は通例の聖母の腰帯の変種です。胸には、金とラピスラズリのブローチが留められており、これは当時の貴金属細工の逸品です。


背景では、岩場の間を一本の道が通っており、道は16世紀風の稜堡に守られた都市に達しています。塔の一つには、パンチャーティキ家の旗が掲げられています。それは、白黒金と二つの球の紋章がついた赤い旗です。


作品情報:

Sacra Famiglia Panciatichi, Agnolo Bronzino, 1541 circa, Olio su tavola, 117×93 cm, Galleria degli Uffizi (Sala 64), Firenze