1481年3月、フィレンツェ、スコペートのサン・ドナート教会のアウグスチノ会派参事会員たちは、レオナルドに《東方三博士の礼拝》を表す祭壇画を依頼しました。この注文はおそらく画家の父で、修道院の代理人だったセル・ピエロ・ダ・ヴィンチが手配したものでしょう。しかし、この仕事は未完のまま終わりました。1482年、レオナルドはフィレンツェを離れてミラノに移ってしまうのです。そして絵はアメリゴ・ベンチの家に残され、それから数年後にヴァザーリが称讃することになりました。
この祭壇画をレオナルドは徹底的に考え抜きました。実際、細部やさまざまな構図を研究した準備デッサンが、たくさん残っています。そして観者に訴えるインパクトの大きいイメージを構築したのです。
ここに見るのは、東方三博士の礼拝というより、主の御公現であり、啓示です。つまりキリストが地上にやって来たことは驚天動地の出来事であり、人類の歴史を変えるものです。
(3枚目)
前景にいる人々はその人類を代表しており、この奇跡的な出来事を目撃して、イエスを救世主として受け入れています。
聖母マリアと幼子イエスを中心に、贈り物を携えて来た東方三博士や騎士、そして素朴な羊飼いなどが、円状に囲みながら平伏すような姿で聖母子を礼拝しています。そこでは様々な人物において性格付けや行動的人間性が示されており、レオナルドの自然主義的側面が明確に表されています。そして、絵の右端にいる青年を、一部の学者たちはレオナルドの若々しい自画像だろうと考えています。
(4枚目)
これに対して、奥にあるのはまだ啓示を知らない世界で、荒れ果てた建物と破壊的な戦争が、それを代表しています。左側には廃墟的な階段や建築物、右側には騎馬の一団が描き込まれており、画面内の空間構成や構図展開において類稀な革新性を見出すことができます。
作品情報:
Adorazione dei Magi, Leonardo da Vinci, 1481-1482, Olio su tavola, 246×243 cm, Galleria degli Uffizi (Sala 35), Firenze