ミケランジェロの《ダヴィデ》とバンディネッリの《ヘラクレスとカクス》に守られたヴェッキオ宮殿の正面入り口(2枚目)を入ると、そこには列柱回廊に囲まれた吹き抜けの第一中庭(Primo cortile)があります。
基本的な設計はメディチ家のリッカルディ宮殿の中庭(4枚目)とそっくりですが、それもそのはず、同じ建築家ミケロッツォ・ディ・バルトロメオ(ミケロッツォ・ミケロッツィの名でも知られる)が最新のルネサンス様式で1470年に改築しているからです。違うのはリッカルディ宮殿の簡素さに比べて、こちらは表面的な装飾がしつこいくらいに施されていることです。そして、それには理由があります。
メディチ家のフランチェスコ1世がオーストリアからジョヴァンナ(フェルディナンド皇帝の娘、マクシミリアン皇帝の妹)を迎えるにあたり、1565年、フィレンツェ公コジモ1世が息子の花嫁に喜んでもらおうと、ジョルジョ・ヴァザーリに命じて壁面を装飾させたからです。ホームシックになりがちな嫁のために、義父のコジモは中庭周辺の壁画にオーストリアの町の風景を18も描かせたました。
また、中庭中央にあった実用的な井戸の代わりに、ヴェロッキオの噴水彫刻《イルカとプット》(5枚目)をカレッジの別荘から運ばせました。現在その場所にはコピーが置かれ、オリジナルは宮殿内に展示してあります。
作品情報:
Putto con delfino, Andrea del Verrocchio, 1470 circa, Bronzo, 67 cm, Palazzo Vecchio, Firenze