10/13/2020

《東方三博士の礼拝》ジェンティーレ・ダ・ファブリアーノ 《Adorazione dei Magi》Gentile da Fabriano


この祭壇画は、1423年に織物商パッラ・ディ・ノフリ・ストロッツィによって、フィレンツェのサンタ・トリニタ聖堂内のストロッツィ家礼拝堂を飾るために注文されたものです。署名と年記が付されています。当時ジェンティーレはイタリアで最も有名な芸術家の一人で、各国のゴシック様式の代表的存在でした。この板絵には150フィオリーノが支払われましたが、ジェンティーレは制作にほぼ3年を費やしました。


(3枚目)

この板絵の額縁は複雑で、尖塔部分には円形画の周囲に智天使と預言者が配されています。左にはエゼキエルとミカを伴った大天使ガブリエル、中央にはモーセとダビデを伴った審判者キリスト、右にはバルクとイサヤの間に御告げを受けるマリアが描かれています。


板絵の両端を閉じる柱の部分には、草花が細長い窓の中に描きこまれています。


東方三博士(マギ magi)の旅はリュネットのアーチの部分に描かれています。左上の部分では3人の博士が星を認め、パレスチナに上陸しエルサレムに出発します。城壁のすぐ外には男が刺されるエピソードが描かれています。2番目のリュネットでは、耕作された丘の間を進みエルサレムに到着する三博士の一行が表されています。異国風の集団の中には武具をつけターバンを巻いた人々もいます。2頭のチータが、鹿に飛びかかろうとしたり動物を八つ裂きにしています。猛獣や残虐な場面は、キリスト到来以前の世界を支配していた暴力を象徴しています。3番目のアーチでは星に先導された3人の博士がベツレヘムの町に入るところです。


(4枚目)

そして、三博士の礼拝の場面が板絵の残りの部分を占めます。聖母の背後には豪華な衣装をつけた2人の産婆がいます。犬、馬、猿、ヒョウを引き連れる一行の中に、自分の紋章である鷹を手にしたパッラ・ストロッツィとお気に入りの息子ロレンツォの姿を認めることができます。


(5枚目)

裾絵部分には左に《キリストの降誕》(上段)が描かれ、これは絵画史上、夜の情景を描いた最初期の作品の一つです。ヨセフは枯木の下に眠り、2人の産婆は小屋の裏の地べたに座っています。奥の方では大天使のガブリエルが羊飼いに御告げを伝えます。中央の《エジプトへの逃避》(中段)では太陽に照らされた田園風景が注意深く描かれています。右側の《キリストの神殿奉献》(下段)はルーヴル美術館に所蔵されていますが、都市生活の細部描写が目を見張らせます。開廊や粗石積みの建て物の間で、豪華な衣装を着けた2人の女性と貧しくぼろをまとった物乞いが居合わせています。


当時はブルネッレスキやマザッチョが新様式を打ち出してはいたものの、宮廷的な国際ゴシック様式の流行は根強く、これが後のボッティチェッリ絵画にも反映するわけです。繊細で豪華な装飾性に溢れた画面は、その魅力がどのようなものであったか、今も充分に伝えてくれます。


作品情報:

Adorazione dei Magi, Gentile da Fabriano, 1423, Tempera su tavola, 300×282 cm, Galleria degli Uffizi (Sala 5-6), Firenze